Writer: 木村 大作
誰にでも家を建てる
「きっかけ」がある
あなたはいま、どんな住まいで暮らしていますか?
マンション、アパート、社宅、それともご実家でしょうか。「そろそろ家を建てたい」という人も、「まだ何も考えていない」という人も、よし、家を建てよう!と行動に移すときは、何らかのきっかけがあるはずです。
私は、これまで約3,000棟の住宅を取材し、そこで暮らすご夫婦にお話を聞いてきました。夢のマイホームを実現するまでには、家族それぞれのドラマがあります。
中には、「建てる予定はなかったけれど、先に新築した友人宅を見て急に建てたくなった」とか、「二人目の子どもを授かって喜んでいたら、双子と判明して部屋が足りなくなったから」「ずっと気になっていた土地が突然売りに出されたから」というケースも。
子どもを有名私立小学校に通わせるために、その近くに住み替えたという教育熱心なご夫婦もいました。
私の場合は、離れて暮らす義父母が高齢で心配になってきたので、妻の実家の近くに新築しました。私自身の年齢も住宅ローンを返済できるギリギリのラインだったので、タイミング的にもちょうど良かったと思います。
どんな暮らしをしたいのか?
を考えてみる
家を建てようと思い立ったら、総合住宅展示場に足を運んだり、住宅会社のホームページや住宅雑誌を見たり、SNSを使って、住宅会社の情報収集する方が多いと思います。夢が膨らむ楽しい時間ですね。
でもその前に、ご家族で話し合ってほしいことがあります。何畳の部屋がいくつ欲しいかではなく、どんなデザインの家に住みたいかでもなく、「自分たちは新しい家でどんな暮らしをしたいのか」をじっくり考えてみてほしいのです。
ペットを飼いたいなら、庭や土間スペースが欲しいし、サーフィンが趣味のご主人なら、ボードやウエットスーツをしまえる外部収納が必要でしょう。大事な車を保管するためのガレージも欲しくないですか?BBQや子どものプール遊びなど、自宅でアウトドアライフを満喫したい方は、室内からフラットにつながるウッドデッキがあるといいですね。
子どもが巣立った後に無駄な部屋が出ないよう、あらかじめリフォームしやすい間取りを考えることも大切です。
また、住宅ローンを払い終わっても、光熱費はその後も永遠に続くので、ランニングコストがかかりにくい家だと老後の暮らしも安心です。
最近は、今も30年後もラクに暮らしたいからと、若い子育て夫婦でも平屋を建てる方が増えてきました。
家は3回建てないと満足しない?
「家は3回建ててやっと満足できる」とよく言われます。それだけ、家づくりに失敗した、後悔している方が多いということでしょう。
ただ、住宅ジャーナリストとして、また、新築経験者として感じるのは、自分でも家づくりを勉強しない限り、100回建てても満足することはないということです。
SNSや雑誌などで基礎知識を増やし、たくさんのモデルハウスや完成見学会に参加すると、「いい家」とはどんな家なのか、見る目と判断力がだんだん養われてきます。
自分たちにとって必要なもの、不要なものもわかってきます。
また、家づくりの専門用語も多少は知っていないと、打合せがちんぷんかんぷんで全く楽しくない、ということもあり得ます。家づくりは打合せから引き渡しまで、おおよそ1年かかる長丁場です。自由設計の注文住宅の場合、決める事柄も多くて大変なので、楽しく打合せに臨むためにも、最低限の知識は持っていたいものです。
いつ建てるのが理想的か?
子どもの誕生や小学校入学を機に新築する方が大半ですが、子どもがある程度大きくなってから建てるのも、一つの選択肢だと思います。その頃には自己資金(頭金)も貯まっていますからね。
あまり小さいうちに建ててしまうと、あっという間に床や壁やドアがキズだらけになってしまいかねません。
また、どうしても子育てしやすい間取りにしたくなるので、将来的に夫婦だけの生活になったとき、部屋を持て余す結果になる場合もあります。
ときどき、子どもが中学生や高校生になってから新築されたお宅を取材しますが、住まい全体に落ち着きがあって、いいなぁと思いますよ。
いい住宅会社とは?
住宅会社をどこにするかは、とても重要な問題です。
これまで15年間、私が取材したご夫婦の意見を集計してみると、住宅会社を選んだ決め手のトップは、「担当者の人柄」です。
もちろん、構造や性能、素材、デザイン、価格も重要な要素ですが、今の時代、どの住宅会社も「そこそこ快適な家」は作れます。そうなると、やっぱり最終的には「人」なんですね。担当者との相性は大事ですよ。
打合せのたびに担当者が議事録を書いて、お客様と情報を共有してくれる会社なら、「言った」「言わない」というトラブルを未然に防ぐことができます。
作り手側の利益優先で工期を急かすことなく、お客さまのペースに合わせて進めてくれる会社も信頼できますね。
ほかにも、見積りの内容が親切でわかりやすい、庭とエクステリアが最初から見積りに含まれている、何でもできますよとお客様の言いなりになるのではなく、要望を聞いてくれた上でプラスαの提案をしてくれる、会社の規模や実績、ブランド力も大切なポイントです。
せっかく新築したのに、依頼した住宅会社が倒産してしまうケースも稀にあります。そうなると、メンテナンスや保証の面が心配になりますよね。
住宅会社との関係は、家が完成したら終わりではなく、建てた後からも家がそこに建っている限り、永久に続きます。だからこそ、何でも相談しやすい担当者がいる会社を選びたいですね。
私もそうですが、新築してからもずっと満足度が変わらない、愛着を持ち続けている方は、住宅会社との良好な信頼関係をキープしています。
執筆者:木村 大作
株式会社 好文堂 代表取締役。コピーライター、クリエイティブ・ディレクター。住宅ライターとしてこれまで3,000棟の住宅を取材した実績を持つ。著書に「失敗しない家づくりの法則(発行:シャスタインターナショナル株式会社)」など。